石井杏奈の“ターニングポイント”となった『PJ』 「“演じる”のではなく“役を生きる”」

内野聖陽が主演を務める木曜ドラマ『PJ ~航空救難団~』(テレビ朝日系)が6月19日に最終回を迎える。
航空自衛隊航空救難団に所属する救難員=PJ(パラレスキュージャンパー)を目指す若者たちの奮闘を描いた本作。学生たちは、救難教育隊の主任教官・宇佐美誠司(内野聖陽)の熱き想いを受け止め、成長していく。今回は、学生のひとり藤木さやかを演じる石井杏奈に話を聞いた。まさかの決断をしたさやかの想いを石井はどう受け止めたのか。俳優としてターニングポイントとなった『PJ』を紐解く(以下、これまで放送された物語のネタバレあり)。(浜瀬将樹) 【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
気持ちが入りすぎた『PJ』藤木さやか役

ーー航空自衛隊が全面協力した本作の撮影を振り返っていかがですか?
石井杏奈(以下、石井):濃密な撮影期間でした。というのも、昨年末からみんなで訓練を始め、基礎から教えていただいていたので、準備期間が長かったんです。ずっと役のことを考えていたこともあって、とても濃かったですね。
ーー改めてさやかについて教えてください。
石井:人にも自分にも負けたくない負けず嫌いで、人一倍努力家です。芯が強く、夢へ向かう気持ちがまっすぐなのですが、少しでも触れると壊れちゃうんじゃないか、と思うほど、張り詰めた空気感を持っている子だと思います。
ーーさやかを演じることにプラスして訓練もあるので、体力的にも精神的にも削られそうです。
石井:私もダンスをやってきて、体育会系ではあったのですが、やっぱりみんなと同じメニューをこなすのはキツい。「男性の腕立て20回と自分の腕立て20回がこんなにも違うのか」とも感じたのですが、“それでも食らいついていくのがさやかだ”と思って訓練してきました。初日、本物の訓練生とまったく同じ訓練をやらせてもらったのですが、終わった後に涙が止まらなくて……。キツいとかの次元ではなく、本当に負けそうで、くじけそうで、あんな気持ちになったのは初めてでした。でも、こんなとき、さやかは絶対に涙した自分を後悔するし、もっと自分を刺激して、奮い立たせて、鼓舞して、前に進むんだろうなと思い、耐えることができました。さやかに救ってもらいましたね。

ーーさやかと呼応する瞬間があったんですね。
石井:彼女も第2話で人に甘えることを知るのんですが、私自身もその頃には、みんなとの距離が縮まり、温かい言葉も素直に受け入れるようになりました。さやかと気持ちがリンクしていたと思います。
ーー第5話でさやかが救難員課程を辞退します。彼女の選んだ決断について、石井さん自身はどう受け止めましたか?
石井:当初から結末を知っていたのですが、役に入り込んでいるからか、つらくてキツくて本が読めなくて……。その日の撮影も、みんなの顔を見るだけでずっと泣いていました。

ーー準備期間も含め、仲間と一緒にやってきたのもあるでしょうし。
石井:そうですね。今回この役をやるにあたって、第5話を大切にしようと思いましたし、気持ちを乗っけるためにも、みんなと仲良くしたいと思いました。みんなで頑張れば頑張るほどキツくなると思って、そのプロセスも大切にしたのですが、結果的に自分で自分の首を絞めるかたちになって……(笑)。監督からも「もう少し潔くてもいいかもね」と言われたほど、泣きましたし、感情任せにお芝居をしたシーンでもあります。

ーー石井さんの目線から、内野聖陽さん演じる宇佐美教官はどう映っていましたか?
石井:愛があるなかでも厳しい言葉を言ってくれる方です。最初はなかなかその言葉を受け止められず、ときに残酷なトゲとなって刺さるのですが、後々、それが生きて、“自分のためだったんだな”と気づく。そこでようやく「愛だったんだ」って分かるんですよね。
ーー宇佐美教官の言葉ってまっすぐで刺さる言葉が多いですよね。
石井:そうですね。実際の教官たちも同じで、本当に強い言葉で奮い立たせてくれる。でもそれが全部愛なんです。

ーーでは、やりとりもリアルなんですね。
石井:実際の教官の方が見て精査、アドバイスしてくださるので、だいぶリアルだと思います。だからか、(心情的には)ドキュメンタリーを撮られてる気持ちなんですよ。演じているというよりも、そこで生きている感じがしましたね。
神尾楓珠×前田拳太郎×渡辺碧斗×草間リチャード敬太×犬飼貴丈×前田旺志郎との絆

ーー同じ学生役を務めるメンバーの印象やエピソードを教えてください。沢井仁役の神尾楓珠さんはいかがでしょうか?
石井:第4話で私をおんぶして山に登るシーンがあるのですが、そのときは撮影も終盤で、寝てないし、体も酷使してキツかったんです。それでも神尾さんは文句や愚痴を言わず、むしろ笑わせてくれて、和やかな空気にしてくださいました。絶対に体も痛いはずなのに、そういう素振りも見せず、なんていい人なんだろうと思いました。
ーー白河智樹役の前田拳太郎さんはいかがですか?
石井:弟気質で、みんなからかわいがられる癒し系です。初日、稽古に参加させてもらったとき、拳太郎くんが「65期いくぞ!」と声を出してくれたんです。“この人は本当に白河だな”と思いましたし、きっと、役に対していろいろ考えてきたからこそ、その言葉が出たんだなと思うんですよね。どこか誇らしく感じました。
ーー長谷部達也役の渡辺碧斗さんは?
石井:本物の教官の方たちからスカウトされるくらい運動能力が高く、メンタルもすごいし、忍耐力もあるんです。高い鉄棒で懸垂をするシーンがあったのですが、手の豆が潰れちゃったのに、それでも「全然できます!」と何回もやっていて……。お芝居に対して真面目だし、碧斗くんがいるから訓練も頑張れました。

ーー西谷ランディー役の草間リチャード敬太(Aぇ! group)さんは?
石井:グループ活動に加えて、ドラマも撮って、お忙しいはずなのに、朝からずっとテンションが一定なんですよ。話しかけてもたくさん喋ってくれるし、すごく笑ってくれるし、リチャさんがいるだけで場が和みます。あと、ライブも見させていただいたのですが、キラキラしてて、ダンスもめちゃくちゃ上手で、圧倒されました。

ーー東海林勇気役の犬飼貴丈さんについても教えてください。
石井:変わってる方ですね。みんなボケ側ですが、犬飼さんは3秒後にみんな理解して笑うという斜め上からボケを言うタイプです。そんな一面がありつつ、全員で食事に行ったときは、毎回ご馳走してくださるスマートさ……。「お返ししますよ」と言っても「明日から言うこと聞けよ〜」と言って和ませてくれるんです。大人の対応をしてくださる方ですね。
ーー近藤守役の前田旺志郎さんはいかがですか?
石井:ムードメーカーですね。現場でもずっと元気ですし、旺志郎くんがいると、みんなまとまるんです。第4話ではメイン回だったのですが、役から熱量や想いがすごく伝わって、“この人に任せたいな”と思いましたし、みんな“近藤についていきたい”と思うだろうなと感じるお芝居をしてくれました。人としても役者さんとしても尊敬できる方です。