『東京サラダボウル』の核にあった“決める”ことの大切さ 鴻田と有木野との再会を願って

ドラマ10『東京サラダボウル』(NHK総合)が最終話を迎えた。思えば本作は、大切な人の手を放してしまったことに対する痛みをともに抱えたバディ、奈緒演じる鴻田麻里と、松田龍平演じる有木野了が、互いに手を伸ばし、支え合う物語だった。
「もしこの先、お前が安心して生きられる世界へ、手を差し伸べてくれる誰かに出会えたら、その手を振りほどかないでくれよな」と言って、有木野の手を放し去っていった織田(中村蒼)の手を有木野が永遠に忘れることができないことと同じように、鴻田もまた、子どもの頃“オンニ”と慕っていたスヒョン(水瀬紗彩耶)の「離れる前の手の感触だけずっと残っている」と言う。第9話において、泣いている鴻田の肩と手をしっかりと支えるように取り、やがて肩を抱く有木野の姿を見ていたら、第1話の副題である「サソリと水餃子」のように本来対極な場所にいたはずの2人の関係性の変遷こそが、この混沌とした世界において、唯一の確かな希望なのだと思った。

『東京サラダボウル』は『クロサギ』の黒丸によるコミック『東京サラダボウル―国際捜査事件簿―』(講談社)を原作に、『サバカン』、現在放送中の『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)の金沢知樹が脚本を手掛けた。本作は、多くの外国人居住者が暮らし、多文化が共存する都市・東京を舞台に、国際捜査の警察官・鴻田麻里と中国語の通訳人・有木野了が、まるで転がり落ちてきた「レタス」をふんわりと包み込むように、こぼれ落ちそうな様々な人生を拾っていく物語だ。

第1話から第5話までは、鴻田が嬉々として食べる国際色豊かな食べ物とともに、基本的には1話完結型で、2人が向き合う事件を通して、日本で暮らす外国人居住者の人々の思いを掬い上げていく姿を描いてきた。ガラリと雰囲気が変わるのは第6話以降である。鴻田と有木野、それぞれが明かしてこなかった個人的な部分(鴻田の幼い頃の話や、有木野と恋人・織田との間に起こったこと)に触れつつ、事件パートは、三上博史演じる阿川博也と、絃瀬聡一演じる“ボランティア”ことシウが放つ強烈な闇に終始していった。

しかし、なんと魅力的な「闇」だろうか。『スワロウテイル』を思い出さずにはいられないほど流暢な中国語を操る三上博史は圧倒的な存在感で、視聴者も、そして「相棒」となった鴻田も魅了していった。「新大久保ってのは神様がたくさんいる街だな」と言ってテーブルの上にたくさんの国際色豊かな食べ物を並べ、鴻田とともに食べる姿など、どこか鴻田に近い部分も感じさせつつ、まさに「魑魅魍魎」、得体の知れない魅力を存分に放っていた。対するシウも、第2話で張柏傑(朝井大智)のバーにいた有木野の前に現れた瞬間から最終話終盤まで終始ミステリアスな魅力で視聴者を惹きつけていった。