日本のボカロPが海外の音楽シーンに与える影響とは 中国最大級の音楽フェス担当者が語る“中国ボカロシーンの現在地”

2025年5月2日~4日の日間にわたって、中国・北京で同国最大級の音楽フェス『2025年北京スーパーストロベリー・ミュージック・フェスティバル』が開催された。同フェスには中国国内の人気アーティストのほか、日本や韓国の人気アーティストも招聘され、多数の来場者を前にパフォーマンスを披露した。
日本人の出演者のなかには、倖田來未、新しい学校のリーダーズといったJ-POPシーンで人気を博すアーティストほか、ニコニコ動画/VOCALOIDシーンで人気を集めるDJ/ボカロPたちの姿もあった。
出演したのはTeddyloid、夏山よつぎ、なみぐる、南ノ南の4名。彼らは、ドワンゴが主催するボカロ文化の祭典『The VOCALOID Collection(以下、ボカコレ)』が、フェスを主催する中国の音楽レーベル「モダンスカイ」の招待を受けて開催するスペシャルDJステージ『The VOCALOID Collection TIME』に出演、中国の熱心なファンたちを前に特別なセットリストを披露した。
今回、リアルサウンドでは主催であるモダンスカイの高志远氏へインタビューを実施。ボカコレTIMEを新設した経緯、中国国内における日本の音楽の受け入れられ方や、日本のアーティストを積極的に招く狙いについて話を聞いた。
中国シーンとの違いは、日本のボカロPは“職業として成り立っている”こと

――今回、『2025年北京スーパーストロベリー・ミュージック・フェスティバル(以下、SMF)』にて、スペシャルDJステージとして『The VOCALOID Collection TIME(ボカコレTIME)』が新設されました。まずはこのステージが新設された経緯を教えてください。
担当者:じつは昨年の『SMF』にもボカロPのきくおさんに出演していただいていたのです。今回は我々モダンスカイの日本支社(モダンスカイジャパン)からドワンゴさんに繋げていただき、『ボカコレTIME』を設けさせていただきました。
――中国国内でも、J-POPやボーカロイドといった日本発の音楽は一定の支持を得ているということでしょうか。どういった受け入れられ方をしているのか、ぜひ現地の肌感を教えていただけますと幸いです。
担当者:我々は普段から「若者がどういう音楽を好きでいるのか」といったトレンドを取り入れるようにはしているのですが、VOCALOIDというジャンルは、重要なトレンドのひとつだと思っています。VOCALOIDのシーンが現在のJ-POPシーンに影響を及ぼしていることは前々から知っていたので、日本の音楽の中でもVOCALOIDには特に関心を持っていました。
今日(ボカコレTIMEの同日)も倖田來未さんや新しい学校のリーダーズさんが別ステージに出演したように、J-POPに関心を持っている中国のリスナーは非常に多いです。それとは別にボカロ曲に関心を持つ中国リスナーは大勢いて、その中でも日本のボカロ曲を聴くリスナーもいれば、中国のボカロPが作ったボカロ曲を聴くリスナーさんもいて、ファンダムが枝分かれしているんです。

――中国にもボカロPは多くいらっしゃるんですね。
担当者:はい、中国にもボカロPは結構いますよ。ただ、日本のようにボカロPが職業として成り立っているわけではなく、収益が得られない状態のアマチュアに留まっている場合がほとんどです。
それに対して日本のボカロシーンは成熟しているので、中国のボカロPが日本のボカロPと交流できる機会が増えればいいなと思っています。そういう意味でも、今後もモダンスカイと『ボカコレ』の交流を続けていきたいですね。
我々としても、「bilibili動画(※1)」で『ボカコレ』のようなオンラインイベントを開催したり、今回のようにオフラインでも『ボカコレTIME』のようなイベントを開いたり、(中国国内の)ボーカロイドファンにリーチできるようなことが今後もできればと考えています。
(※「bilibili動画」:中国で人気の動画投稿サイト)