『ルパン三世』新作映画は宮崎駿×高畑勲版のイメージをどう変える? 三つの異なる『ルパン三世』を再考

『ルパン三世』新作映画はどんなイメージ?

 『ルパン三世』が好きといわれたら、すかさずどの『ルパン三世』と聞き返す。それほど『ルパン三世』関連の作品が多く、一大コンテンツへと成長した。まさに〝ルパン帝国〟である。ちょうど劇場アニメ『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』も公開されることなので、あらためて『ルパン三世』ワールドの魅力と、新作への期待を語ってみたい。

 個人的な話になるが、私は『ルパン三世』を三つに分けている。一つはもちろん、モンキー・パンチの『ルパン三世』だ。一九六七年に双葉社から刊行された「週刊漫画アクション」の創刊号から連載された劇画である。怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの孫のルパン三世が、拳銃の名手の次元大介、十三代目石川五ェ門、敵にも味方にもなる正体不明の美女・峰不二子たちと共に、盗みを働いたり、騒動に巻き込まれたり、銭形警部を翻弄したりする。

 モンキー・パンチは女優の藤原紀香との対談で、ルパンについては「当時、『007』。あれが出てたんで、ボクの中では『007』っぽいルパンを考えていたんですけど」、峰不二子については「途中から出てきたんですけどね。あのボンドガールいるでしょ。ああいう感じでルパンガールみたいなのって出したいなっていう感じがあったんですね」と語っている。なるほど、スピーディーで洒落たストーリーや、適度なお色気とユーモアの源泉はそこにあったのか。また、モンキー・パンチの独自の絵柄と表現方法も人気を集めることになる。特に絵柄は、当時、影響を受けた劇画家が何人もいた。

 さて、この劇画を原作にしたテレビアニメ『ルパン三世』が1971年10月から、翌72年3月にかけて放送される。視聴対象を大人にしており、大隅正秋が演出した今ならノワールといわれそうな話が、実に魅力的だ。しかし本来のアニメ視聴者である子供にはそっぽを向かれ、視聴率は低迷。大隅正秋が降ろされ、宮崎駿・高畑勲コンビの演出となり、内容も子供向けの明るいタッチになる。ただ、キャラクターデザインと作画監督をした大塚康生にインタビューした『大塚康生インタビュー アニメーション縦横無尽〔新装版〕』(実業之日本社)を読むと、制作進行の関係などもあり、スッパリと切り替わったわけではないようだ。興味のある人は同書を読んでもらいたい。


 この大隅ルパンと、宮崎・高畑ルパンも、私の中の『ルパン三世』のイメージになっている。だから『ルパン三世』を三つに分けてしまうのだ。とはいえ多くの人が『ルパン三世』といって頭に浮かぶのが、宮崎駿が監督し、1979年に公開された劇場アニメ『ルパン三世 カリオストロの城』だろう。テレビアニメ『ルパン三世』にも「ジャジャ馬娘を助だせ!」のような、少女を守護する騎士としてのルパン三世が描かれていたが、それを劇場アニメではスケールアップしたストーリーで表現。あまりにも傑作すぎて、このルパン三世のイメージが一番強くなった。

 以後、映像の『ルパン三世』及び派生作品は、大隅ルパンと宮崎・高畑ルパンの間を揺曳するようになる。まあ、内容が良ければ、どちらのタイプでも問題なし。その観点から『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』の感想をといいたいところだが、現時点では予告映像しか見ていない。予告そのものはとても面白そうである。

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